FC2ブログ

北の大地で 星を数えながら

~日々の出来事や感じたこと、聖書の言葉など 小さくても星のようにキラリ☆光ることを 分かち合えればいいなぁ~

あなたのもの

 二葉亭四迷が「死んでもいいわ」と訳したという昨日の記事の続きです。米原万里さんの記す本にも同じように書かれていたので、うなずきながら読み進めていたところ、巻末の「編集部注」という数ページを読んでびっくりしたのです。

 何と読者からの指摘で(2006年4月)、二葉亭四迷が「死んでもいいわ」と訳したツルゲーネフのロシア語には、いわゆる英語に相当する「I love you」なる言葉が原文には無かったということが分かったのです。小樽在住のその読者は、ツルゲーネフの全集を購入され(もちろんロシア語)、二葉亭四迷の訳文と照らし合わせてみて分かったとのことでした。 四迷が訳したツルゲーネフの言葉は、ロシア語で言う「I love you」ではなく、英語で言うところの「Yours(あなたのもの)」だったようです。

 それを受けて米原万里さんは、手紙に対する感謝と感激の気持ち、また読者の知的探究心に対して頭が下がる思いであること、そして心恥ずかしくなったことを返信にしたためていました。その上で、消え入るような声で「あなたのものよ」とつぶやいた主人公の言葉を「死んでもいいわ」と訳した四迷の文学的センスへの驚きを綴っています。さらに前述の部分の書き直しと、指摘してくださった読者の名前と手紙の一部を引用したい旨、そして御礼とお詫びの言葉を添える丁寧な手紙を送られていたのでした。

 2006年5月10日付けとなる手紙の15日後の5月25日、米原万里さんは癌のために亡くなられました。編集部によると「その部分をどう直すか、最後まで気にされていた」ようで、小樽在住の読者に宛てた手紙が著者の絶筆になったとのこと。

米原万里「不実な美女か貞淑な醜女か」
(米原万里「不実な美女か貞淑な醜女か」)

 ロシア語の「I love you」を「死んでもいいわ」と訳したのではなかったという最初の驚き以上の、不思議な読後感が残りました。それは「死んでもいいわ」と訳さずにはおれない四迷の感受性、四迷にそこまで思わせるツルゲーネフの心の襞を記す心情描写、自分のミスに対して誠実な米原万里さんの真摯な姿勢、小樽在住の読者が持つ上からではない真理を求める姿勢とでも言えるでしょうか。

 そして私が主なる神に対して「主よ、わたしはあなたのものです」という時、そこにどういう意味と心を込めているかが問われているように思いました。

(1日1章 ネヘミヤ12章「その日」)

にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 北見情報へ
にほんブログ村

日記 |
| ホーム |